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人事制度を変えても、社員の意識や組織が変わらないなら、メンバーを変えるしかない?人材開発のプロ、ピョートル・フェリクス・グジバチさんは、メンバーが悪い習慣に戻れないように“背後の橋を燃やす”ことが重要だと言います。その真意は?株式会社 USEN-NEXT HOLDINGSの女性管理職が話を聞きました。
コロナ禍に先駆けたリモートワーク移行、スーパーフレックスの導入など、多様な働き方の実現に向けて、革新的な働き方改革”Work Style Innovation”を推進している株式会社 USEN-NEXT HOLDINGS。
さらなる飛躍を目指す中で、組織、そして個人間でも改革に伴う悩みが生まれているようだ。今回は、人事部で働く2人の女性管理職が抱える悩みに、グーグルで人材開発に関わり、現在は人材コンサルティング会社を経営するピョートル・フェリクス・グジバチさんが答えた。
(2020年12月24日|ハフポスト日本版 Partner Studio 掲載)
リモートワークの定着によるコミュニケーション量の低下…どうする?ヒントは、茶目っ気。
ピョートル・グジバチ氏(以下、ピョートル):お二人は、どんな悩みを抱えているのでしょうか。
藤島紫織(以下、藤島):現在、マネージャー2年目で12人のメンバーがいます。コロナ禍でオンラインでのコミュニケーションが増え、顔を合わせる頻度も減り、メンバーのコンディション管理や業務把握に悩んでいます。
ピョートル:まずは、枠組みを作ることが大切です。マネージャーは、メンバーの目標設定から、「報・連・相」の頻度や進め方、といったコミュニケーションの枠組みを決めなければなりません。枠組みがあればオンライン、リアルを問わず、メンバーの性格やスキルを十分に把握し、適切に業務を割り振ることが可能になるからです。
山本まりも(以下、山本):リモートワークは姿が見えない分、マネージャーが「サボっているかも」という不安からむやみに報告を求め、束縛しすぎるという声もあります。
ピョートル:適切な管理は、必要ですね。人はわざとでなくても忘れたり、ついサボったりしてしまう生き物。目標と締め切りを設定し、1on1ミーティングなどで適宜報告させることで「サボる機会のない」組織を作るのです。加えて、コミュニケーションには「茶目っ気」も欠かせないですね。
山本:茶目っ気…ですか?
ピョートル:メンバーが、失敗したり、忘れた時に、マネージャーが「あら~あなたまた忘れちゃったの?」とあっけらかんと言えれば、「叱られるかも」という緊張感が和らぎ、ミスを隠そうという気持ちもなくなるでしょう。ユーモア、チャーミングさも交えて、言いやすい環境作りが大事です。
藤島:なるほど。ピョートルさんには、すごく茶目っ気を感じます!すべてのマネージャーが、茶目っ気を身につけられるものでしょうか?
ピョートル:「茶目っ気」に養成コースはありません(笑)。ただ、誰もが自分らしく振る舞える職場をマネージャーが作れば、ジョークや笑顔、いたずらも自然と生まれるのではないでしょうか。オンラインの場合だと、やりとりに時差が生じることで、相手が無意識に不信感を持つこともあります。そういう時は、ゆっくり話したり、雑談をしたり、などの配慮もあるといいですね。
藤島:茶目っ気以外に必要な要素は、ありますか?
時には、残酷なほどの厳しさも必要。
ピョートル:結果に対しては、残酷なほどの厳しさを持たなければいけません。
山本:「残酷な厳しさ」とは…?
ピョートル:企業が持続的に成長していくためには、成果を出すことは必要不可欠ですよね。例えば、メンバーの性格が良くても結果を出せないなら、パフォーマンスの改善を求めるか、違うチームを探す、つまり異動や転職を勧める必要もあります。
ピョートル:メンバーとコミュニケーションを取り、「心理的安全性」(サイコロジカル・セーフティ)が担保された組織作りは、大切ですが、もちろん何をしても許されるという意味ではありません。
例えば、子どもたちが遊ぶ時、彼らの好きにさせたら、火事などを起こしかねません。逆に彼らの遊びを管理しすぎると、つまらないと思うだけです。
企業も同じで、マネージャーは、最低限のルールや枠組みを作り、メンバーに守らせ、助けを求められたら寄り添い、解決の糸口を一緒に探すのです。
藤島:マネージャーとメンバーが「成果を出す」という共通認識を持ち、仕事のやり方はある程度、メンバーの裁量に任せるということが大切なのですね。
圧倒的な自由には、圧倒的な責任感を。背後の橋を燃やし退路を断つ。
山本:各業界がコロナ禍で大打撃を受ける中、生き残りのため、新規事業の開発など新たな挑戦と変化が不可欠です。同時に、社員の意識改革も欠かせません。
ピョートル:厳しい話をすれば、もしかしたら変わらないかもしれません。例えば、経験や興味のない人がバスケをしても勝てるはずはなく、給料を10倍払ってNBAの選手を雇い入れた方が早い。人事制度を変えても社員の意識や組織が変わらないなら、メンバーを変えるしかないのです。
藤島:他に打つ手は、ないでしょうか。
ピョートル:社員に新しい習慣を身につけさせるのは、不可能ではありません。できない人を責めるのではなく、習慣を改めた人に、評価やメリットを与える。同時に、悪い習慣に戻れないよう背後の橋を燃やす。メンバーが顧客管理システムへの入力を怠りがちなら「記載がないなら、面談で話すことはない」などと伝え、入力せざるを得ない状況を作るのです。
山本:弊社では、社員の働き方の多様化を目指し、働く場所、時間などを個々に任せているのですが、“自由と責任“のバランスが取りづらくなったと感じることがあります。
ピョートル:山本さんのお悩みは、組織をもう一段成長させるための「成長痛」のようなものですね。解決には社員とコミュニケーションを繰り返し、圧倒的な自由を与える一方、圧倒的な責任感を持って働いてもらいたいのだと伝えるしかありません。
山本:社員やメンバーに伝える時に、気をつけるべきことはありますか?
ピョートル:「あなたは会社に何を求め、どんな結果を出しますか」と問いかけ、掘り下げて考えてもらうのです。社員が変革の意図を頭で理解し、心から納得して初めて、変化に対応しようというモチベーションも高まります。
さらに言えば、「職場が永遠に今のままだとは限らない」という危機感を持つことも大切です。コロナで多くの人が感じたように、さまざまな面で状況は一変しましたよね。
藤島:企業は、そうしたメッセージ(危機感)をどのように発信していけばいいのでしょう。
ピョートル:企業のトップや、経営陣が、人事異動や事業再編などさまざまな形でメッセージを発信していくことが大切ですね。
山本:なるほど。ピョートルさんが考える“より強固な組織作り”とは何でしょうか。
ピョートル:多くの企業はピラミッド型組織で、下部の人の権限は弱くなっています。
しかし、最高のパフォーマンスは、一人の突出したマネージャーがいるチームではなく、同じスキルレベルを持ったメンバーたちが相互に刺激し合うチームから生まれやすいです。
複雑性が増しているこれからの時代は、一人ひとりがリーダーシップを発揮し、さらにフォロワーシップを持ってサポートし合うことが重要です。その中で「上司」を一言で表すなら、自分自身が直接的にパフォーマンスを発揮する人ではなく、「メンバーが最大の成果を挙げるための場作りができる人」だと思います。
<お悩み相談を終えて>
山本さん:視野を広げ、目線を一段上げることができました。加速度的に変化する世の中に対して、常に必要とされ続ける会社であるために、また社員がより多様な働き方や成長を実現していけるように、グループの人事制度を設計する立場として自分自身も常に勉強し、アップデートし続けていきたいと思います。そして、何を大切にするのか?何のために働いているのか?を自信をもって語れる人間でいたいです!
藤島さん:コロナ禍で環境が変化し、今まで以上にマネジメントは難しいなと思うことが多々ありました。悩み相談の中で、意外にも「茶目っ気」や「ユーモア」などの言葉をピョートルさんからお聞きし、自分の視点が大きく変わりました。
話しやすい環境づくりを心掛け、今後も周りのメンバーと密なコミュニケーションをとり、「共通認識」をもった上で信頼関係をより一層築いていきたいと思います。
(2020年12月24日|ハフポスト日本版 Partner Studio 掲載)
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